目が見えなくても・見えにくくても映画やテレビが見たい!
(対面通信より抜粋)
そもそも音声解説とは
皆さんは音声解説付きのテレビ番組や映画を見たことがありますか?
テレビや映画で、主音声ではわかりにくい場面転換や人物の動作、表情などを音声で説明するのが『音声解説』です。別の呼び方として『音声ガイド』や『副音声』と呼ばれることもあります。
今回は、いろいろな視点から音声解説について説明をさせていただきます。
音声解説がなければわかりにくい事柄の具体例を、幾つか紹介します。
- 問いかけに対して、無言で返事をする場合 (うなずく、クビをふる、無視するなど)
- 涙が頬をつたう
- 笑顔で大きく手をふる
- 柱の影でこっそり聞いている
- ナイフをポケットに隠す
- 回想シーン(回想のはじまりと終わりの区切り)
など、重要なのに音になっていない情報がいろいろあります。
また、映画を見ていてまわりの人が笑っているのに自分だけがわからずに取り残されていることはとても寂しいし、もどかしく思っている視覚障害者はたくさんおられると思います。そこに音声解説があれば、見える人と近い感覚で映画やテレビを楽しめるのではないでしょうか。当センターでは、映画会の企画・製作などを通して音声解説の周知・普及に取り組んでいます。ご存じの方もおられると思いますが、NHK「バリバラ」(毎週 金曜日 21時放送)の解説放送にも協力しています。是非一度見てください。
音訳とはちがうこと
1.説明する時間が限られている
本の音訳の場合にも、絵や写真・表が出てきて説明が必要なことがよくあると思います。その際の絵や写真の説明では頭を抱えられた方もおられるのではないでしょうか。音声解説では、原則としてセリフとセリフ、重要な効果音をさけて説明しますので、説明する時間が限られています。
例えば3秒しか尺(時間)がなければ、わずか15〜18音程度になります。
「病室 佐藤が入ってくる(15音)」 というように、常になにを伝えなければいけないのか取捨選択に迫られています。基本的な優先順位として「いつ」「どこで」「だれが」「なにをしたのか」という順番になります。
2.雰囲気に合わせた声が必要
わかりやすいことが前提なので、メインのナレーターが女性の場合、解説のナレーターは男性のほうが区別しやすい場合もあります。また、静かなシーンでは、少しトーンを落としたり、アクティブなシーンでは快活に声を出したり、コメディータッチの作品は、あまり落ち着いた声だと合わないことだってありますので、場面に合わせたナレーション、作品に合わせたナレーター選びも考慮する必要があります。
音声解説は、ト書きではありません
「街を俯瞰した映像」というように文章として見るとすぐにわかるような言葉でも、音にしてしまうとわかりにくい言葉がたくさんあります。
「高台から見下ろした街並みが広がる」というように、音声解説では口語的(話し言葉)な言葉で伝えるようにしています。ト書きのような表現だと、どうしても説明が目立って聞こえてしまうことがありますので、あくまでも映像の中に溶け込むような表現に努めています。いきなり、全景、階下、船上と言われてもイメージしにくい(わかりにくい)ときがあります。
一度あなたも挑戦してみませんか?
音声解説の表現方法には様々なものがあります。「見る」ひとつを取っても「見つめる」「目を向ける」「上目遣いで見上げる」「チラッと横目で見る」など、語彙を増やして説明が映像のイメージに合うように考えることも重要です。
見えたものを、見たままに伝えることは、視覚障害の方への状況説明として必ずお役に立つものだと思います。映画やテレビを見ながら、自分なりの解説(説明)を考えてみてください。
ユニバーサルな情報提供を目指して
久々に大河ドラマを見ていると直ぐに状況が把握できないときがありますよね。そんな時に音声解説があれば、この武将が誰で、どこでなにをしているところなのかがわかってきます。このように音声解説には話の流れをつかみやすいという特徴があります。視覚障害の方にもわかりやすいということは、それ以外の様々な方にもわかりやすい(やさしい)ということだと言えると思います。
ですが、音声解説付きのテレビ番組を探しても少ないのが実情です。必要性と有益性をしっかり伝えていかなければいけません。そのためにも、たくさんの方に関心を持ってもらえるように力をそそいでいきたいと思います。
皆さまのご理解とご協力をよろしくお願いします。