はじめに

 本マニュアルは、EPUBアクセシビリティチェックツール「エース(Ace by DAISY)」、および「アクセシブル出版ナレッジベース(DAISY Accessible Publishing Knowledge Base)」の活用方法について記したものです。2024年度のSARTRAS(一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会)の共通目的事業の助成を受け、日本デイジーコンソーシアムの協力の元、社会福祉法人日本ライトハウスが作成しました。

 本マニュアルでは、同助成事業により日本語化した「エース」と、EPUBアクセシビリティ規格を解説した膨大なデータベース「アクセシブル出版ナレッジベース」(一部を除き、「エース」で摘出されるエラーのカテゴリーを中心に日本語化)、EPUB再生アプリ「トリウムリーダー(Thorium Reader)」、EPUBエディタ「Sigil」を用いています。

 「エース」は、EPUB出版物のアクセシビリティをチェックするための無料のアプリで、非営利の国際団体であるデイジーコンソーシアムが提供・改良を行っています。本マニュアルは2025年2月末時点の「エース」と「アクセシブル出版ナレッジベース」を元に作成していますが、「エース」は、『欧州アクセシビリティ法』の施行が間近のヨーロッパを中心に、欧米で活用されているツールで、今後も世界各国の要望に応じた改良が見込まれます。

 現在、EPUB3.3、EPUB Accessibility1.1、WCAG2.2(Webコンテンツのアクセシビリティに関するW3Cのガイドライン)の制定と、EPUB AccessibilityのW3C、ISO、JIS化により、日本語のアクセシブルなEPUB書籍の提供は、技術的に十分可能な段階に来ています。また、アクセシブルなDRM「Readium LCP(Readium Licensed Content Protection)」の登場で、アクセシビリティを確保しながら、著作権保護と閲覧期限の管理ができるようになりました。

 この度の、ツール類の日本語化および本マニュアルの発行を機に、アクセシブルな電子出版を目指す国内の出版社・団体が、「エース」「アクセシブル出版ナレッジベース」をご活用くださり、読書バリアフリー社会の実現への一助となれば幸いです。

2025年3月
 社会福祉法人日本ライトハウス
 情報文化センター 館長 久保田文

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