日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2024年6月号   <<表紙イラスト>>  梅雨のイラストです。 カタツムリが3匹、縦一列になって移動しています。カタツムリはそれぞれ体の大きさが異なり、後ろにいるカタツムリほど小さくなっています。カタツムリの行進を女性と眼鏡をかけた男性が笑顔で見守っており、男性はカタツムリに小さく手を振っています。2人の後ろにはガクアジサイが一面に咲いています。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2〜4頁)   ●感謝報告(5〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆専門音訳講習会「図表コース」を7月に開講  毎日新聞大阪社会事業団との共催で、写真・図・表等、視覚的資料の音訳方法の基礎を学ぶ講習会を実施します。  日時 7月10日・31日、8月7日・28日、9月4日・11日(いずれも水曜・全6回) 午前10時〜12時  受講料 1,200円   定員 15人  講師 当館専門音訳チーム「理数チーム」メンバー  対象 現在音訳活動中のボランティアで、これまでに視覚的資料(写真・表・図・グラフなど)の音訳経験がある方。また、原則、全ての講義(全6回)に 出席できる方  申込 当館録音製作係(電話06-6441-1017)へ実施要項をご請求の上、6月25日(火)必着でお申込みください。  ◆「ガイド体験会」で久しぶりの食事体験  ボランティア友の会が開催する「ガイド体験会」。今年度は館外でのガイド体験と、久しぶりにアイマスク着用による食事体験を行います。  日時 7月11日(木) 10時30分〜13時  プログラム 10時30分〜ガイド講習(肥後橋駅からフェスティバルタワー方面への地下通路等を予定)、12時10分〜当館4階でアイマスクでの食事体験。  参加費500円。申込みは、当館3階総務係(電話06-6441-0015)か各係(6〜8階・アルテ)まで。  ◆チャリティコンサートに菅田利佳(すがた りか)さんが出演  6月16日(日)に 開催される当法人のチャリティコンサートに、ぜひご来場ください。特別ゲストの菅田利佳さん(ピアノ)は和歌山県出身で、点字で勉強し、昨年3月に東大教育学部を卒業。国連難民 高等弁務官になるのが夢で、卒業時に成績優秀な学生に送られる総長大賞を授与されました。今回の出演は、指揮を務める澤和樹氏による熱烈な推薦で実現し、グリーグのピアノ協奏曲第1番の 第1 楽章を演奏します。  6月16日(日)12時30分開場、13時30分開演。会場はザ・シンフォニーホール(JR福島駅)。チケット(3,500円)は当館3階総務係で販売中です。  ◆6月の休館・休室について 6月13日(第2木曜)=エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は書庫・在庫整理日で休室    <<センターの頁>>(2〜4頁)   ●コロナ禍を越えて、来館者数、対面リーディングに復調の兆し   〜2023年度の事業のご報告(2)〜  前号から当館の2023年度の事業実績をご紹介していますが、今月号ではサービス部(図書・情報係と機器・用具係“エンジョイ!グッズサロン”)の主な実績をご報告します。(館長 久保田 文(あや))  ◆大阪府をはじめ全国に様々なサービスを提供  サービス部は、視覚障害者等の方々に、直接、様々なサービスを提供する部署です。  主なサービスは、@図書の貸出・提供、Aプライベート製作、B対面リーディング、C用具・機器の紹介と販売、Dパソコン・スマホ・その他のICT機器の利用支援、です。  目が見えない・見えにくい、文字や文の理解が困難、本が持てない・頁がめくれない、目で文字を追うのが困難など、様々な理由で読み書きに困難がある方なら、身体障害者手帳の有無に関わらずご利用いただけます。図書の貸出やプライベート製作などは大阪府内に在住・在勤・在学の方に限っていますが、その他のサービスは全国の方に提供しています。  当館のボランティアの皆様の活動は、すべて、これらのサービスを提供するためのものであり、視覚障害者等の方々の、生活、就労、学びを支えてくださっていることに感謝申し上げます。  ◆5千人超の登録者に10万点以上の図書を貸出  当館に登録してくださっている利用者の方は、2024年3月現在、5,247人です。若干のコロナ禍の影響は残るものの、読書の機会を求めて来館された方や眼科医療機関の紹介、「日本ライトハウス展」などで当館のサービスを知った方など、昨年度は56人の新規登録がありました。  2024年3月には、「サピエ図書館」が、改修のため3週間にわたり停止したことで全国の点字図書館が大きな影響を受けましたが、当館では、当館製作の雑誌のダウンロード提供や、所蔵図書の継続貸出に努め、点字・録音・電子書籍を合わせて合計10万点を超える、例年並みの貸出数を維持することができました。特に、音声デイジーの雑誌に関しては、前年より2千件以上の貸出数の増加となりました。  ◆新サービス「SDカードセレクトパック」を開始  また、新たなサービスとして、SDカードに特定のテーマ毎に集めたデイジー図書を10タイトル前後入れて貸し出す「SDカードセレクトパック」を2023年8月に開始しました。  昨年度貸し出した「SDカードセレクトパック」のテーマ(一部)は以下の通りです。  「本屋大賞2023年」、「芥川賞・直木賞第161回から165回」、シネマ・デイジー「アカデミー賞」「ミュージカル映画」、「歴史・時代小説アンソロジー」、「人の数だけドラマあり!お仕事小説」等。  ◆対面リーディングサービスも徐々に復調  対面リーディングサービスは、引き続き、感染予防対策として、対面リーディングスタジオ2部屋をZoomミーティングで繋ぎ、利用者の方とボランティアの方にそれぞれの部屋に入っていただく方法で継続しました。コロナの5類移行に伴い、徐々に感染対策を緩めながら、ボランティアの皆さんにご協力いただいた結果、2022年度より54件多い、211件・316時間のサービスを提供することができました。  ◆グッズサロンの来館者、ICTの利用支援も好調  当館の5階にあるエンジョイ!グッズサロンでは、視覚障害者用の白杖、遮光眼鏡などの補装具や、音声・触知式時計、拡大読書器、プレクストーク、点字ディスプレイなどの日常生活用具の他、視覚障害の方に便利なグッズ類を各種取り揃えて紹介・販売しています。  視覚障害の方が、生活のどこに不便を感じているかは、その方の見えにくさや、生活スタイル、ニーズによって、一人ひとり異なります。エンジョイ!グッズサロンでは、単に用具を販売するのではなく、利用者の方にご来館いただき、対面で、お一人ずつしっかり時間を取ってお話を伺い、展示している用具・機器類を一緒に見ていただきながら、その方のニーズに合うものを探しています。そのため、予約制を取っています。昨年度のエンジョイ!グッズサロンの来館者数は2022年度を100人以上上回る5,079人で、新規来館者は285人でした。  また、エンジョイ!グッズサロンでは、パソコン・スマホなどのICT機器の利用支援にも力を入れています。ICTサポートに複数の視覚障害職員を配置しており、当事者ならではの、要点を押さえた、きめ細かなサポートができていると自負しています。昨年度、ICTサポートの担当職員がマンツーマンでレクチャーを行った個人講習は530件、電話・メールによる無料相談「パソコンQ&A」の利用は4,147件に上ります。  この他、毎日新聞大阪社会事業団のご助成とサポートボランティアの方々のご協力を得て、iPhoneや点字ディスプレイなどの最新機器・アプリの体験講習を行う「ICTサロン」を年間10回開催。「サピエ図書館」を運営する全視情協から「サピエサポートセンター」を受託して、全国のサピエ利用者からの質問・相談1,650件に対応しました。  ◆「ニポラチャンネル」と「日本ライトハウス展」  2020年に開設したYouTube「ニポラチャンネル」では、スマートフォンの使い方やアプリの情報、白杖の紹介、新製品の用具などを動画で紹介しています。昨年度はスマホの歩行支援アプリやゲストを呼んでのトーク番組など12本を配信。番組総数が70本を超えました。  また、読売 光と愛の事業団のご助成で、西日本最大規模の視覚障害者福祉機器展「日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェア2023」を2日間にわたり開催。44社が出展し、1,529人のお客様が来場されました。当日は、多くのボランティアの皆さんにガイドとしてご協力いただいたおかげで、お一人で来場された視覚障害の方にも、安心して楽しんでいただけました。  当館では、今年度も、これらの情報提供・支援サービスを一層充実させていくとともに、利用者の方々のご要望に応えられるよう、製作部、サービス部、総務部が連携して事業に取り組んでまいります。ボランティアの皆様には、変わらぬご協力を賜りますよう、何とぞ、よろしくお願い申し上げます。   ●バリアフリー2024で「目のコーナー」と点字名刺体験を開催  4月17日から19日、大阪市住之江区のインテックス大阪で「バリアフリー2024」が開催され、様々な分野の福祉従事者や専門学校生、当事者の方々が多数来場しました。今年は、新入社員や来日して福祉を学んでいるアジア地域の学生など、若者が多かったように思います。  当館が毎年企画・開催している「目の見えない方・見えにくい方のための展示コーナー」には、当館のエンジョイ!グッズサロンを始め、白杖、拡大読書器などの用具・機器、スマートフォンの歩行支援アプリなど15社が出展。2日目には、歩行支援アプリ「Eye Navi」に関するワークショップを開いたところ、約40人が参加。アプリに搭載が検討されている新たな機能やAIの可能性など、今後の展望が発表され、参加者から高い期待が寄せられました。  また、点字製作ボランティアの方々にお手伝いいただいた「点字名刺を作る体験コーナー」も大人気で、毎日100人を超える人が訪れ、点字に親しんでいただくことが出来ました。ご協力くださった皆さんに心からお礼申し上げます。 (写真=点字体験コーナーの様子。4人がけの机に参加者とボランティアが対面で座り、講習を受けながら点字名刺を作っている。) ◆点字体験コーナーの協力者(敬称略、50音順) 大杉敦子 小笠原恵三 絹川和子 栗谷博子(くりたに ひろこ) 漕江圭子(こぎえ けいこ) 中島敬子 中安龍夫 船井由紀子 増田芳子 宮本洋子 山尾由紀 吉川久美(ひさみ)   ●より多くの人が、希望する本に出会えることを願って   〜「整理・情報」の仕事のご紹介〜  私は、アルテ別館(アルテビル9階)の図書・情報係の一員として、主に「整理・情報」を担当しています。館内では「整理・情報係」と呼ばれています。「整理・情報」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか? 本を整理整頓して皆さまにお知らせする……だけではないのです。図書を収書し、それを利用者の皆さんの手元に届けるまで、私たちの仕事は続きます。今回は「整理・情報」の主な業務2本柱についてご紹介します。(サービス部 図書・情報係 伊藤 信乃)  ◆必要とされる本を選ぶ〜選書会議〜  当館では、月に1度、製作部の各係の職員と、私たち図書・情報係の職員で、選書会議を行なっています。理想としては「全ての人に全ての本との出会いを」という図書館員の理念に基づいて、多種多様なものを選びたいところですが、出版されている全ての本を当館で製作するのは不可能です。利用者やボランティアの皆さんからの希望や推薦も含めて、「どんなものが今の時代に必要とされているのか」、「日本ライトハウスだからこそ作るべきものは何か」のせめぎあいの中で、貸し出しの現場の職員、製作の現場の職員、そして整理・情報の担当職員(私です)が意見を戦わせます。さらに言えば、その本は点字でじっくり読んでもらうべきなのか、録音図書として聴いてもらうべきなのか、などなど、考えに考えて製作する本を選んでいます。  この選書会議が、当館の点字・録音図書の製作のスタートラインです。  ◆使いやすい書誌情報の提供を目指して  無事に本を選び終わっても気は抜けません。ここからが、さらに大事な作業です。その本が点字・録音図書で作られることを、全国の点字図書館、公共図書館、ボランティアグループ、利用者の方々にお知らせするために、「サピエ図書館」に書誌情報を登録しなければいけません。  書誌情報とは、原本のタイトル、著者名、内容等の項目のことです。簡単に言ってしまえば、「ここにこんな本がありますよ」という情報を作るだけの作業なのですが、サピエ図書館では、点字、音声デイジー、テキストデイジー、マルチメディアデイジー、シネマ・デイジーそれぞれに異なる書誌情報のルールがあり、一律同じようには作れません。  また、書誌情報には優れた検索性が求められるため、登録するデータベースの性質にマッチした内容の書誌情報を作らなければなりません。サピエ図書館の場合はこれが本当に難しく、毎日頭を悩ませています。  ここで作る情報は誰のためのものなのか。利用者である視覚障害等の方のためのものであり、利用者の方を支援する点字・公共図書館の職員のためのものでもあります。利用者がご自身で該当の図書にたどりつけるものでなくてはならないし、利用者の代わりに該当図書を探す職員にとっても、使いやすいものでなくてはならないのです。目指すべきは「適度に情報が掴めるもの」なのですが、この“適度”がくせ者です。  誰にとっても使いやすい書誌情報を作ることは困難を極めます。ですが、ここで諦めてしまうわけにはいきません。不十分な書誌情報では、「探している本が見つけられなかった……」と利用者をがっかりさせ、その方の本との出会いのチャンスを閉ざしてしまうかもしれません。大げさな言い方になってしまいますが、私は、こうして思案を重ねた書誌情報が、誰かの人生に彩りを加え、人生の選択肢を増やす1冊との出会いにつながると思っています。  これからも、より多くの人に本との出会いを提供できるよう、日々模索しながら業務に励んでいきたいと思います。   ●報告の頁(8頁)  ◆電子書籍のアクセシブル化事業に着手  当館では、今年度から、インクルーシブな出版を推進するための電子書籍のアクセシブル化事業に着手します。インクルーシブな出版とは、出版社自身がアクセシブルな電子書籍(合成音声による文字の読み上げ、文字の色・大きさの変更が可能な電子書籍)を発行し、障害者に対しても健常者と同じ電子書籍を提供する出版形態のことです。インクルーシブな出版の実現にはいくつかの課題がありますが、いずれも技術的・施策的に解決できると考えています。  今年度は、出版社が発行する電子書籍をアクセシブル化するための、既存のツール類の改良と日本語化、及び、アクセシブル化の手順マニュアルを作成します。もちろん、この事業は、従来の質の高い点字・録音図書等の製作を続けながら進めて行くものですので、引き続き、ボランティアの皆様のご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。  ◆当事者による「就労相談合同マッチング」を開催  様々な業種・職種の視覚障害者が自身の就労経験を伝える活動をしている「視覚障害者就労相談人材バンク(SJB)」が、初の合同マッチングを開催します。企業、公務員、医療、福祉関係に従事する70名のSJBメンバーが、視覚障害当事者、企業の採用担当者、支援者・家族の相談に応えます。事前申込み不要、参加費無料。  日時 7月14日(日)13時〜17時  会場 TKP新大阪 駅前カンファレンスセンター(新大阪ラーニングスクエアビル4F)。交通は、JR新大阪駅東口12番出口から徒歩1分、メトロ御堂筋線新大阪駅中央改札口5番出口から徒歩8分。  問い合わせは、SJBのHPの「お問い合わせ」からメールで。https://shurojinzaibank.com/  ◆録音ボランティアの大西祥子さんがご逝去  当館の録音ボランティアの大西祥子さんが、今年3月に逝去されました。大西さんは1988年から活動を始められ、280タイトルに及ぶ図書の音訳・校正に携わられました。本が大好きな穏やかなお人柄で、7年前に岐阜に転居されてからも校正作業を続けられ、体調を崩して引退される3年前まで、当館の録音図書の製作を支えてくださいました。生前のご献身に心より感謝と敬意を表し、ご冥福をお祈りします。 あゆみ 【5月】 9日 ボランティア世話人会 11日 オープンデー(館内見学日、2人) 14日 点訳ボランティア養成講習会開講 16日 専門点訳講習会「英語コース」開講 22〜23日 法人理事会・評議員会 予定 【6月】 13日 サービス部休室(在庫・書庫整理日) 15日 オープンデー(館内見学日、要予約) 16日 日本ライトハウスチャリティコンサート 21日 専門音訳講習会「小説の読み方コース」開講 28日 わろう座映画体験会 編集後記 市の健診も兼ねて歯科に行ってきました。歯も歯ぐきの状態も非常に褒められました。6月4日から10日は歯と口の健康週間です。今年の標語は「歯を見せて笑える今を未来にも」です。歯磨きを頑張ります。(一) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2024年6月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 久保田 文)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 かたおか朋子  発行日 2024年6月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円