日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2024年7月号   <<表紙イラスト>> 七夕のイラストです。 短冊や七夕飾りが飾られている大きな笹が空に向かって伸びています。 女性と眼鏡をかけた男性が自分の短冊を笹にかけようとしています。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2〜4頁)   ●感謝報告(5〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆専門点訳「はじめての理数系教材点訳コース」を開講  毎日新聞大阪社会事業団との共催で、問題集や副読本に必要な理科・数学の点訳の概要、教材の製作のポイントを学ぶ講習会を実施します。  日時 8月24日、31日、9月14日(いずれも土曜、全3日間) 10時〜15時  講師 加藤俊和氏、福井哲也氏、他  受講料 1,200円  定員 15人  対象 日本語点訳の経験があり、理数系の教材の点訳に興味のある方  申込 当館点字製作係(電話06-6441-1028)へ実施要項をご請求の上、7月30日(火)必着でお申込みください。  ◆点訳・音訳ボランティア養成講習会を開講  当館で活動していただくボランティアを養成するため、標記の講習会を9月から開講します。  ◆点訳ボランティア養成講習会(中級)  日時 9月3日〜12月10日(10月8日・11月19日を除く火曜、全13回)  受講料 無料  募集人数 若干名  対象 すでに点訳の基礎を習得しており、事前課題(申込締切後に配布)を提出し合格された方  申込 当館点字製作係(電話06-6441-1028)へ実施要項をご請求の上、7月25日(木)必着でお申込みください。  ◆音訳ボランティア養成講習会(2)  日時 9月18日〜1月15日の13時〜14時50分(12月25日・1月1日を除く水曜、全16回)  受講料 7,000円  定員 12人  対象 当館の音訳講習会(1)の修了者、または他の音訳・朗読講習会を修了しているか、すでに音訳活動を始めている方で、いずれも受講前テストに合格した方  申込 当館録音製作係(電話06-6441-1017)へ実施要項をご請求の上、7月24日(水)必着でお申込みください。  ◆7月の休室について  7月13日(土)=製作部休室(15日月曜指定祝日の振替) 【エンジョイ!グッズサロンと図書貸出】  7月11日(第2木曜)=書庫・在庫整理日  7月16日(火)=15日(月曜指定祝日)の振替休室 ※3階総務係と4階会議室は、上記いずれの日も開室    <<センターの頁>>(2〜4頁)   ●点字で学ぶ子どもたちの教育の保障をめざして   〜「教点連」の活動紹介〜  当館が加盟する「全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会(以下、「教点連」)」は、インクルーシブ教育(地域の学校で、すべての児童・生徒が共に学ぶこと)を受ける視覚障害の子どもたちのために、自治体からの依頼を受けて、主に小・中学校の点字教科書を製作しています。ボランティアグループ・点字図書館・点字出版所・個人など約30の個人と団体で構成されており、当館は事務局業務の一部を担っています。「教点連」の活動と、当館の取り組みを紹介します。(点字製作係主幹・奥野真里)  ◆自主開催のセミナーでスキルアップ  近年の教科書は、非常にビジュアル化されています。子どもたちの関心を引くため、イラストや写真、マンガ、図、表なども多く掲載されています。また、デジタル教材と連動したQRコードが付与され、タブレットやスマホで読み取ると、インターネットにアクセスして音声や3D画像、映像が視聴できるようになっています。このような様々な趣向を凝らした教科書を、どのように点訳すれば良いのか、点訳ボランティアの皆さんは日々、奮闘しています。  教点連では、点字教科書の製作に必要な技術や知識を得るためのセミナーを、年に2回企画し、会員以外の施設職員や点訳ボランティアも広く受け入れて開催しています。先日行われたセミナーでは、視覚支援学校用の理科の教科書を事例に、星座の位置の表し方やグラフの書き方など、子どもたちが点図を触った時に理解しやすくする工夫を学びました。 (写真=「新編 新しい算数4(上)」の点字教科書と墨字教科書)  ◆担当する施設・団体のコーディネイト  教点連の大きな役割が、もう一つあります。それは、各自治体から依頼を受けた教科書を、どこの団体が担当するかを調整するコーディネイトです。このコーディネイトは当館が請け負っています。  まず、自治体から教点連に問い合わせが来たら、メーリングリストで会員に依頼内容を配信し、受託可能な団体があるか確認します。すぐに手が挙がる時は良いのですが、なかなか決まらない時は、各団体の担当者に個別に連絡し、調整することも。自治体からは急を要する依頼が多く、各団体とのやりとりは短期決戦になります。かなり緊迫しているため、分担が決まったときの安堵感は大きいものがあります。  近年、新たなボランティアの成り手が少ないことや、ベテランの点訳者の高齢化による引退などで、点訳ボランティアは全国的に漸減傾向にあります。教科書・教材の分野においても同様で、どの地域でも点訳者不足に悩まされているのですが、特に理数系の点訳・校正者が激減しており、養成が急務となっています。  進化するAI技術による自動点訳の活用を提案されることもありますが、前述の通り、様々な資料の集合体である教科書・教材の点訳は一筋縄ではいかず、まだまだ、人によるケースバイケースでの判断が必要なのです。 (写真=専用ソフトでの作画作業と点図データ。パソコンの画面に点字で描かれた人体図が映し出されている。点図データは、様々な臓器が、大きさの違う点によって描き分けられている。)  ◆当館の教科書・教材点訳の取り組み  当館は、遡ること約40年前からインクルーシブ教育用の点字教科書の製作に携わっています。また、教点連が発足した2005年以来、積極的に会の運営・活動に関わり、点字教科書・教材の普及と啓発に努めてきました。当初は名古屋と東京に事務局を置いていましたが、2年前から大阪に拠点を移し、当館を含む3施設・団体が事務局の役割を分担しています。当館は、文部科学省や自治体との間の窓口として、問い合わせに答えたり、依頼に応じて受託団体のコーディネイトを行ったりしています。  また、当館では、教点連の活動に加え、インクルーシブ教育で高校に進学した生徒の、点字教科書・教材の支援もおこなっています。高校の教科書は内容が専門的で大部のものが多く、対応できる点訳者を見つけることが喫緊の課題です。  今年で37年目を迎える、毎日新聞大阪社会事業団との共催による専門点訳講習会は、英語、理数、楽譜などの専門点訳ボランティアの養成を目的としたもので、これまでに受講された多くの方々に、教科書・教材点訳に関わっていただいています。  当館では、これからも、視覚障害児童・生徒の学びを支えるために、質の高い教科書・教材の安定的な製作を目指してまいります。引き続き、ボランティアの皆様のご協力、ご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。 (写真=専門点訳講習会「英語コース」の様子)   ●第42回チャリティコンサートが盛会のうちに終了  当法人では、6月16日(日)に、盲導犬育成支援のためのチャリティコンサートを、ザ・シンフォニーホール(大阪市福島区)で開催いたしました。つい数日前までは天気予報が雨だったため心配していましたが、職員の祈りが天に届いたのか、当日は晴天に恵まれたコンサート日和になりました。  管弦楽団千里フィルハーモニア・大阪が待つ舞台に、澤 和樹氏(指揮者)と共に登場したエメラルドブルー地に金色のスパンコールを散りばめたドレス姿の菅田利佳(すがた りか)さんは、グリーグのピアノ協奏曲第1番の冒頭、ティンパニーのクレッシェンドに続く力強いピアノの出だしで、見事に観客の心をつかみました。菅田さんに続いて登場したヴァイオリニスト川畠成道(かわばた なりみち)さんは、ヴァイオリン曲の定番といえるメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を演奏。繊細で透明感のある音色がホール一杯に響き渡りました。  今年は、誰もが一度は聞いた事のあるクラシックの名曲が選曲され、ロビーには、盲導犬訓練所のパピー(子犬)ボランティアの方による2ヶ月半のパピーがお目見えし……と、終始、お客様にお楽しみいただけたのではないかと思います。ご来場くださいましたボランティアの皆様、ご支援者の皆様、誠にありがとうございました。当日は用事で行けないのでと、アミティチケット(視覚障害の方々のご招待およびコンサート運営費に充当)をご購入くださった多くの方々にも、心より感謝申し上げます。 (写真=澤和樹氏率いる千里フィルハーモニア・大阪と共演する菅田さん。賑わうロビー)   ●Cartao postal(カルタォン ポスタウ)(絵葉書)   〜根本職員のブラジル留学エッセイ〜  当館6階・録音製作係は、今、空前のポルトガル語ブームです。今年2月に入職し、日々黙々と、録音雑誌のマスター製作とコピー・検聴を行っている根本和広職員ですが、高校生の時にブラジル、大学でポルトガルに留学した経験を持ち、その後も中南米を中心に何度も海外を訪れている旅行家です。今回は、高校時代のブラジル留学の思い出を聞きました。  ◆Boa tarde(ボア タルジ)! (こんにちは!)  皆さんは、ブラジルと聞いてどんなイメージを持たれますか。カーニバル? サッカー? コーヒー? シュラスコ? カポエイラ?……どこをとっても、すべてがブラジル連邦共和国そのものなのです。  ブラジルは、日本との時差はマイナス12時間。季節は、南半球に位置するので、日本が6月・7月の時は真冬となります。世界第5位の国土をもつブラジルは、広大で、北はアマゾン熱帯雨林、中央部はチリ側国境のパンタナール湿地帯、南部はアルゼンチン側との国境近くにイグアスの滝があります。北部は赤道直下、南部の内陸部は雪が降る地域も。ブラジルに立つと、あまりの広さに自分の悩みがちっぽけに思えます。  私が最初にブラジルを訪れたのは、高校2年生から3年生に掛けての1997年2月〜1998年1月。アメリカ経由で約30時間のフライトでした。交換留学プログラムの試験を受けて、派遣先がブラジルに決まり、南部のサンタカタリーナ州のラジェスという田舎町で、現地の高校生と一緒に過ごしました。学費や生活費は、すべて現地のボランティアの方に支えられました。まだEメールの無い時代で、文通(絵葉書)で連絡を取っていました。  ブラジルは人種の坩堝とも言われ、北部はアフリカ系移民、南部はヨーロッパ系移民が住んでいます。私のホームステイ先はイタリア系移民の家族でしたので、ブラジル料理(フェジョン等)とイタリア料理(ニョキ、ポレンタフリッタ等)を堪能することができました。  ブラジル人は本心から陽気な性格で、誰に会っても明るい人が多く、日本のことをよく尋ねられました(宗教のことや天皇のこと、生活のことなど)。当時高校生だった私は、日本の文化をあまりにも知らないので、答えられないことが多かった気がします。  南へ行くほど寒い。真夏のクリスマス。挨拶はハグや頬にキス3回……カルチャーショックを受けたこの交換留学は、私の人生の転機となりました。  今でも鮮明に覚えているのは次の言葉です。  A cultura nao tem melhor, pior, ha so diferenca(ア クゥトゥラ ナォン テン メリョール ピオール ア ソー ディファレンサ). 『文化には優劣はなく、あるのは違いだけだ。』  留学後は、異なる考えを受け入れること、相手を尊重する姿勢などを大切に暮らしています。(録音製作係 根本和広) (写真)1997年9月7日、ホームステイ先のラジェスにて、ブラジル独立記念日のパレードに参加。右から、ドイツ、ノルウェー、日本(根本職員)、オーストラリア(2人)、アメリカの各国出身の留学生。  ◆今日から使えるポルトガル語】  おはよう Bom dia(ボン ジア)  ありがとう Obrigado(オブリガード)(男性が使う)  Obrigada(オブリガーダ)(女性が使う)  調子はどう? Tudo bem?(トゥード ベン)   ●報告の頁(8頁)  ◆スリランカのハルシャニさんが当館で研修  ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業の第23期生として昨年10月来日したスリランカのハルシャニ・カウシャルヤさん(弱視、女性)が4月中旬から5月中旬、当館をはじめ関西各地で研修を受けられました。ハルシャニさんは、コロンボ大学を卒業後、視覚障害者団体のメンバーとして大学で学ぶ視覚障害学生の支援を行ってきました。当館では、英語通訳のボランティア(先月号で紹介)のご協力を得て、点字製作係で点字教科書製作について学んだほか、録音製作、視覚障害者用具とICT機器、サピエ図書館などを研修。視覚障害リハビリセンターや国立民族学博物館も見学し、当館職員との交流も深めました。7月に成果発表を終えて帰国する予定ですが、今後は高等教育機関での学習環境の整備・支援に取り組みたいとのことです。ますますのご活躍をお祈りします。  ◆日本文藝家協会などが読書BFに関する共同声明  今春、日本文藝家協会、日本推理作家協会、日本ペンクラブが「読書バリアフリーに関する三団体共同声明」を発表しました。声明文には、表現に携わる者として、「読書バリアフリー法」、改正「障害者差別解消法」、「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」に賛同の意を表し、出版界、図書館界とも歩調をあわせ、読書環境整備施策の推進に協力を惜しまないと綴られています。共同声明のきっかけは、芥川賞を受賞した市川沙央(いちかわ さおう)さんの著書『ハンチバック』と、市川さんが自らの言葉で読書保障を強く訴えた会見だったとのことです。前月号でご紹介したように、当館では今年度からSARTRAS(サートラス)(授業目的公衆送信補償金等管理協会)の助成金を受け、出版者と協力して、電子書籍をアクセシブルなものにする事業への取り組みを始めましたが、この共同声明により、今後、出版される電子書籍のアクセシブル化が促進されることを願います。  ◆中央区バリアフリー上映会に協力  6月8日(土)、大阪市中央会館で、中央区社会福祉協議会「HANDSちゅうおう」主催のバリアフリー上映会『海よりもまだ深く』(監督・脚本:是枝裕和、キャスト:阿部寛、樹木希林、真木よう子、他)が開催され、当館が映画本編の上映と音声解説の配信を担当しました。当日は、当館の利用者やボランティアの方も来場され、会場は世代を超えた220人の参加者で満席になりました。上映後のアンケートでは、「バリアフリーに興味が持てた」「音声解説を初めて聞いたが、とても分かりやすかった」などの声が寄せられました。 あゆみ 【6月】 13日 サービス部休室(在庫・書庫整理日) 15日 オープンデー(館内見学日、2人) 16日 日本ライトハウスチャリティコンサート 21日 専門音訳講習会「小説の読み方コース」開講  ライトハウス職員人権研修1回目 28日 わろう座映画体験会 予定 【7月】 11日 サービス部休室(在庫・書庫整理日)  ボランティア友の会「ガイド体験会」  ボランティア世話人会 13日 製作部休室(15日月曜指定祝日の振替) 16日 サービス部休室(15日月曜指定祝日の振替) 20日 オープンデー(館内見学日、要予約) 編集後記 家族が梅酒に漬けた梅を使ってジャムを作ってくれました。ドイツにはルバーブという酸味の強い野菜があり、ジャムを作ると梅ジャムの味によく似ているそうです。梅や梅を使ったお菓子が好きなので、いつか食べてみたいです。(徳) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2024年7月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 久保田 文)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 かたおか朋子  発行日 2024年7月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円