日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2024年12月号   <<表紙イラスト>> 冬至のイラストです。 銭湯の大浴場にゆずが5個浮かんでいます。子どもからおばあさんまで4人の女性が湯船に笑顔で浸かっています。子どもは顎まで水面に浸かって口元が見えない子もいます。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2・4・8頁)   ●利用者の頁(3〜4頁)   ●感謝報告(5〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆ボランティア交流会バザーの物品提供のお願い ボランティア友の会では、今年度のボランティア交流会を来年3月に開催し、毎年好評の友の会バザーも例年通り行う予定です。つきましては、バザーへの物品提供のご協力をお願いします。ご家庭で眠っている不要品等(生もの、使用済みの物を除く)がありましたら、ご寄贈くださるようにお願いいたします。バザーの収益金はボランティア友の会世話人会の活動に充てさせていただきます。  ご寄贈・問合せ先 総務(電話06-6441-0015)  交流会の詳細は次号以降に発表します。  ◆津軽三味線の愛さんと箏の歩さんが共演  日本ライトハウスの後援会・灯友会(とうゆうかい)の「クリスマスチャリティの集い」が12月21日(土)14時から肥後橋「徐園」(当館から徒歩2分)で開催。日本ライトハウス職員の愛さんによる津軽三味線と、友人の歩さんによる箏のほか、「ソノリティ」によるハンドベルの演奏が行われます。入場料3,500円(飲茶付き)。問合せは、灯友会事務局(日本ライトハウス本部)の柿木(かきぎ)職員まで(電話06-6961-5521、月〜金曜日)。  ◆「音訳ボランティア養成講習会テキスト 応用課程編」が発売  2022年に出版された「基礎課程編」に続いて、この度、一般書の音訳技術の習得をするための「応用課程編」が発行されました。外国語、カタカナ語、注、索引、図表、会話文などの読み方や校正技術についてまとめられています。全視情協発行。B5判、196頁、1,540円(税込)。購入はエンジョイ!グッズサロン(電話06-6441-0039)までどうぞ。  ◆年末年始の休館・休室について  12月6日(金)・7日(土)=全館休館(日本ライトハウス展のため)。  12月12日(第2木曜)=エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は書庫・在庫整理日で休室  12月26日(木)=利用者サービス、ボランティア活動年内最終日  12月28日(土)〜1月5日(日)=全館休館  1月6日(月)=仕事始め(総務係以外は休室)  1月7日(火)=利用者サービス、ボランティア活動再開    <<センターの頁>>(2・4・8頁)   ●当館の事業を支えるボランティア活動B「録音ボランティア」   〜情報のすべてを声で伝える活動〜  当館のボランティア活動を紹介する連載企画。3回目の今回は、6・7階を中心に録音図書・雑誌を製作されている録音ボランティアについてご紹介します。(点字製作係主任 木田陽子)  当館では、1959年からボランティアによりオープンリールテープレコーダーで録音図書の製作を開始しました。現在、「録音ボランティア」は、「墨字の情報を音声に訳す」という意味で「音訳ボランティア」とも呼ばれ、見出しや頁の情報も書き込んである「音声デイジー図書」をパソコンを使用して製作しています。完成した録音図書は、視覚障害の方以外に、墨字の書籍を手で持ったり、ページをめくったりすることが難しい方などにも広く利用されています。  製作の大きな流れをご紹介します。  @音訳・録音:音訳者が、原本の内容を録音します(1人で行う「家庭録音」と、館の録音スタジオで校正者とペアで収録する「スタジオ録音」とがある)。図や写真、表(以下、図表)の説明も録音します。  A音声の校正:音訳データは区切りの良い所で校正者に渡され、校正者は音声を聴き、誤読など修正が必要な箇所を音訳者に指摘します。  Bデジタル編集:音訳者が修正した1冊分のデータを、編集者が編集用ソフトウェアを使って、章やページの始まり、図の挿入場所などに印をつける作業(デイジー編集)を行います。 (写真=デイジー編集専用ソフトの画面)  C編集の校正:デイジー校正者が、パソコンとデイジー再生機で編集済みデータの内容を確認します。  D最終確認:最後に職員がチェックした後、貸出用のCDにコピーしたり、「サピエ図書館」にデータ登録したりして、利用者に提供します。 (写真=デビューを待つ完成間近のデイジー図書)  情文では、図書の音訳活動に入るまでに約2年の講習を受講していただきます。まずは長時間の録音でも疲れない発声方法、聞き取りやすい発音、意味が伝わる文章の区切り方、そして全国の利用者が理解しやすい共通語アクセントなどを習得します。また、図表の説明の仕方、図書を音訳する際の決まりなども勉強します。活動開始後に数冊音訳した方の中には、英語・理数・東洋医学・古典などの専門チームに入り、専門図書・雑誌の製作に参加したり、デイジー編集を学んだりする方も出てきます。  音訳ボランティアを志す方は、元々朗読が好きな方が大半ですが、「小説以外の本が多くて驚いた」、「こんなに下調べが要ると思わなかった」、「写真の説明を考えるのは大変!」とおっしゃいます。それでも、来館して先輩やお仲間に相談したり、メールで尋ねたりして、利用者に内容を伝えるために日々努力されています。4年前からは、ベテラン音訳者によるZoomを使った「なんでも相談会」が始まり、ちょっとした疑問から図表の処理の相談まで、ボランティア同士で解決していただける場ができました。 (写真=Zoomを併用した専門チームの勉強会)  娯楽のための録音図書は数多く作られてきましたが、様々な情報を得るための実用書が次第に求められるようになりました。イラストを多用した本が増加し、音訳の難易度も上がっていますが、いつの時代も「利用者に聞いてもらっていること」がボランティア活動の励みになっています。   ●全国視覚障害者情報提供施設大会・福岡大会に参加して  録音製作係 内藤流津(るつ)   10月に福岡県で開かれた全国視覚障害者情報提供施設大会の録音担当者分科会では、「あなたならどうする?こんな校正表〜丁寧なコミュニケーションで質の高い録音図書を!」をテーマに、実習とグループワークが行われました。  前半は、会場に校正課題の音源を流し、その場で校正を行いながら、校正のポイントと校正表の書き方を確認しました。これは、当館のボランティアの皆さんからの問い合わせが多い事項なので、『録音通信』や定例会等で内容をお伝えしていきたいと思います。  後半は、グループワークでの事例検討でした。ボランティアの皆さんをどのようにコーディネートしていくかがテーマで、他施設の職員と貴重な意見・情報交換ができました。  提示された事例は、いずれも音訳者と校正者の意見が分かれており、職員が間に入って調整するケースです。議論の軸となったのは、 @訂正作業を依頼するべき内容かどうか、A音訳者にどのように校正結果に向き合ってもらうか、B校正者に何をどのようにフィードバックするか、の3項目です。そして、出された様々な意見の全てに共通していたのは、「質の高い録音図書を早く提供する」ことを最優先にした対応・判断をしなければならないということでした。  当然と思われるかもしれませんが、私は職員として日々、音訳者・校正者(編集者)、それぞれの異なる意見を聞くうちに、迷いが生じることがあります。  録音図書は、今や小説・文芸書だけでなく、実用書や知識・情報を得るための専門書も多く求められるようになりました。音訳技術も高度化していますが、いつの時代も「利用者に聞いてもらっていること」が、ボランティア活動の励みになっています。  「校正」とは、何のために、誰のために行うものなのか。これからも、ボランティアの皆さんと一緒に考えながら、より良い録音図書作りに取り組んでいきたいと思います。    <<利用者の頁>>(3〜4頁)   ●「目が見えなくなったから、人と人を繋げることができた」   利用者インタビューA 三宅 景子さん  京都生まれで滋賀育ち、20代後半からずっと大阪に住んでいる三宅景子さんは、背が高くハツラツとした生粋の関西人です。美大 でグラフィックデザインを学び、卒業後には大阪に本社のあるベビー用品の企業に就職。30年以上にわたり勤務しています。当館には、毎月、JRPS(日本網膜色素変性症協会)大阪の交流会に参加するために来館されています。お仕事や趣味のこと、今後の目標について伺いました。(館長 久保田 文(あや))  ◆辛抱強く会社と交渉し、自ら作り上げた職場環境 −−三宅さんは、ずっと今の会社に?  はい。就職して最初の1ヶ月は、お店でベビー用品を売ってたんです。その時はもう目が悪くなってきていたので、お金を扱うところがしんどくて。5月の連休明けに異動して、商品部の事務と電話取り、あと部長の事務作業の業務に変わりました。事務も、最初は手書きだったんですが、まだ見えていたので普通にやっていました。  職場にパソコンが入ったのは30歳過ぎからで、当時はまだ画面が見えていたんですが、今は全く見えないので、画面読み上げソフトの音声でパソコンを使っています。まだぼんやり見えていた時に、無料のNVDAという読み上げソフトをお試しで使ってみて、その後、PCトーカーという有料ソフトを入れてもらいました。会社とは、嫌な思いもしながらだいぶ戦いましたけれど、ちゃんと言わないと、会社は分からないですからね。「何で要るねん?」って感じで、「いやいや見えへんからやろ!そっから説明せなアカンか」って(笑)。今だったらちゃんと説明できるけど、当時はそういうことを言われるのがすごくしんどくて、撤退しては家で泣いての繰り返し。でも少しずつ、分かってくれる人が出てきて、部署も異動して、今は別の会社にいるみたいに待遇が良いです(笑)。  ◆趣味はカラオケ、ウクレレや鼻笛も  カラオケは、見えにくくなってからは 行ってなかったんですが、5〜6年前にスマホのアプリから予約できるって教えてもらって、そのアプリで歌詞も音声読み上げで聞けるんで、また行くようになりました。アプリだと自分で歌詞を確認できるから気楽なんですが、「陽当たり(ひあたり)」を「ようあたり」って読んだり(笑)。でも友達と2人で10時間くらい歌っちゃうこともあります。  ウクレレもやってます。まだ1年半くらいなんで全然弾けてないんですけど、人前で披露せな上手くならんって言われて、今年のJRPSのお正月のお楽しみ会で、おじさん2人引き込んで、3人でオープニングコントをね、やらせてもらいました(笑)。あと、鼻笛とか。 −−鼻笛とは?  鼻で吹く笛。いつも持ってます。視覚障害の人、結構やってますよ。鼻炎の人や風邪ひいてる時は無理ですけど(笑)。鼻でふうっと吹いて、口の開閉で音程をとります。(「歩いて帰ろう」を吹いて)ちょっと音程がズレてる(笑)。これ、宴会の最後に「蛍の光」吹いたりね。「はよ帰ってや!」って(笑)。 (写真=鼻笛の実演をする三宅さん。鼻の形にぴったりと はまる形の鼻笛を、左手の親指と人差し指でつまむように押さえて演奏している。)  ◆これからの夢は『ブラインドメンター』  岡田太丞(たいすけ)さん(視覚障害者就労相談人材バンクの共同代表)が、視覚障害者の仕事として新しく「ブラインドメンター」というものを構築したい、そのための「ブラインドメンタープロジェクト」っていうのを始めているんですけど、具体的には、写真を何枚か用意しておいて、見えてる人が見えない人にその写真の説明をする。で、私たちがブラインドメンターという役になって、アドバイスしながら言葉を引き出していく……晴眼者が、見えない人に自分の言葉で説明するということを、視覚障害者との対話で学んでいくというものです。  で、岡田さんから、これを企業のコミュニケーション研修としてできないかと話があって、ダメ元で私の上司に言ってみたら、人事部に話を撒いてくれて、「ぜひうちの会社でやってみよう!」と。3月にすんごく上手いブラインドメンターを呼んで、従業員15人位を対象にやったんです。研修担当者にも受けが良くて、年内にもう1回やることになりました。  私が、このブラインドメンター役をできるようになれば、社内研修が無料でできるなって。私も会社で新しい役目ができる……ちょっと定年延ばしてもらえるかな(笑)。まぁ、会社にいる意義が、ただただ障害者雇用のカウント枠にいるだけじゃなくて、三宅さんでないとアカン、という仕事ができるようになればなっていうのが、目標です。  今、うちの社で視覚障害は私だけだけど、違う部署の子でも「駅まで一緒に行きましょう」って言ってくれて仲良くなったり、たぶん目が見えていたら繋がらない人がいっぱい。家の近所のコンビニの店長が、店辞めてブラブラしてたから、「ガイドしたら」って言ったらガイドヘルパーになったんです。で、うちの姉もこの4月からガイドを始めて、私の知らんとこでその店長と知り合ってたり(笑)。先日、道で歩いてて私に声をかけてくれる人ばっかり4人集めて、5人で飲み会をしたんですよ。私だけ4人を知ってて、4人はお互い全然知らない。年齢も性別もバラバラで、集まってきたら「誰ですか?!」って(笑)。でも皆仲良くなっちゃって、全員、駅と私の家の間に住んでるし、不思議な縁やなって。  それも、声をかけてもらえたからやし、杖持ってなかったら絶対知り合ってなかったから。視力無くなった分、ご褒美をもらってるんやろうなって思います。 (写真=笑顔の三宅さん)  三宅さん、たくさんの楽しいエピソードを、ありがとうございました。   ●報告の頁(8頁)  ◆専門音訳グループ「古典チーム」の生みの親 工藤和子さんがご逝去  国会図書館の専門書や近代文学を中心に多数の図書を音訳してくださった、録音ボランティアの工藤和子さんが、10月18日に亡くなられました。工藤さんは1983年から当館のボランティアとして活動され、2001年には古典チームを立ち上げ、リーダーとなって活躍されました。日本史がご専門で、2007年に勇退されるまで、「日本の歴史」「日本の国宝」「ローマ人の物語」など、175タイトルの録音図書の製作に携わり、多くの後進を育ててくださいました。ご冥福を、心よりお祈り申し上げます。  ◆「毎日チャリティー美術フェア」が梅田で開催  12月20日(金)〜22日(日)に、公益財団法人毎日新聞大阪社会事業団による美術・工芸品のチャリティ即売会・入札会が、うめだMホール(北区梅田3-4-5毎日新聞ビルB1F)で開催されます。第一線で活躍する作家や著名人から寄贈された絵画、工芸品、色紙など約700点が出品され、収益は社会福祉事業に役立てられます。20日(金)は10時30分〜17時、21日(土)・22日(日)は10時30分〜16時まで。入場無料。  お問い合わせは、毎日新聞大阪社会事業団(電話06-6346-1180)まで。 あゆみ 【11月】 9日 オープンデー(館内見学日、4人) 16日 ボランティア世話人会  V友の会施設見学会(あべのタスカル) 予定 【12月】 6日 日本ライトハウス展(〜7日、OMMビル) 10日 点訳ボランティア養成講習会修了式 12日 サービス部休室(書庫・在庫整理日) 14日 オープンデー(館内見学日、要予約) 26日 サービス、ボランティア活動年内最終日 27日 仕事納め 【1月】 6日 仕事始め、法人新年互礼会 7日 サービス、ボランティア活動再開 9日 サービス部休室(在庫・書庫整理日)  ボランティア世話人会 11日 製作部休室(13日月曜指定祝日振替)  ※点字製作係のみ開室 14日 サービス部休室(13日月曜指定祝日振替) 18日 オープンデー(館内見学日、要予約) 編集後記 今月は、いよいよ日本ライトハウス展。ボランティアとして参加してくれる学生たちは18・9歳。日ラ展は1998年から開催され、今年で27歳を迎えます。どっちも若い!(文) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2024年12月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 久保田 文)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 かたおか朋子  発行日 2024年12月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円